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CAREER LAB【工学系ガールズインタビュー第5回】 決め手は気泡「熱を帯びない電気メス」 芝浦工業大学 山西研究室

【工学系ガールズインタビュー第5回】
決め手は気泡「熱を帯びない電気メス」
芝浦工業大学 山西研究室
CATEGORYトレンド
DATE2015/04/08
東京理科大学「.cpeg」の学生リポーター南保です。第5回となる今回のインタビューでは、電界誘起気泡インジェクションメス、通称バブルメスを用いて研究をおこなっている、芝浦工業大学 工学部機械工学科准教授 山西陽子先生の微細機能性流体工学研究室に伺いました。
芝浦工業大学 工学部機械工学科准教授 山西陽子先生

ミクロサイズになって体内で治療を行いたい

――はじめに、山西先生のご経歴とその研究内容について教えてください。

もともとはロンドン大学で熱流体や石炭燃焼の研究をおこなっていましたが、平成16年に芝浦工業大学で講師をすることになりました。その後、平成18年にポスドクとして東北大学へ移った際、現在研究しているバイオロボティクス専攻へと移行しました。専門は機械工学だったので、バイオについて詳しいわけではありませんでしたが、農学部や理学部の方々と連携しながら研究を進めていきました。その時にであったのが「ナノ電気メス」です。

クローン牛の作製においては、牛の受精卵から核を取り除き、他の牛の核を注入する必要があります。10μmレベルの作業を人の手でおこなうのは、簡単なことではありません。これをマイクロロボットでおこなえないかということで、ナノ電気メスの開発に乗り出しました。はじめはメスの熱で細胞が壊れてしまったり、タンパク質が付着して再利用できなかったりなどの問題がありましたが、その過程でまっすぐに打ち出された気泡によって細胞膜が切断される現象を発見しました。気になって見てみると、メスの先端に空洞ができていることがわかったのです。この空洞がほぼ同じ大きさの気泡を次々と打ち出す役割を果たしていました。

この気泡メスは、クローン牛の作製はもちろん、遺伝子組み換え技術や、針なし注射器、タンパク質の結晶化促進などのさまざまな分野への応用が期待されています。また、気泡は電荷を有し物質をくっつけやすいという特性があります。そのため、試薬をまとった気泡を作って細胞内に投入するといったように、単に切るだけでなく加工や輸送のできるメスとしても活用できます。
電界誘起気泡インジェクションメス、通称バブルメス
平成22年に名古屋大学へ移って独立。平成25年、芝浦工業大学へと戻ってきました。現在は、バブルメスだけではなく、液中プラズマの研究もおこなっています。液中プラズマはレーザー加工器などに使われていましたが、これを大気圧低温の条件にすることで殺菌や治療などの医療応用が可能になりつつあります。

――進路を選択するにあたって、どのようなことを考えましたか。

修士の1年目で留学し、ロンドン大学インペリアルカレッジでPh.Dをとりました。この選択はタイミングと勢いでした。このままイギリスに留まることもできましたが、日本での生活に順応できないのではないかという不安から帰国を決め、芝浦工業大学の特任講師として戻ることになりました。教員として2年間務めましたが、何か新しいことをしたいと思って、日本で有数のクリーンルームがあると聞いていた東北大学にポスドクとしていくことを決断しました。教育者とポスドクとの選択は悩みましたが、このまま教育者としてやっていくのかと考えたとき、イギリスでの生活を思い出し「自分は研究が好きだ。これからも続けたい」と研究者になることを決意しました。

――転職についてはどう思われますか。

いいと思います。自分にとってこの先のイメージがわかないなと思ったら、思い切って環境を変えるのも手だと思います。退路を断つのも、若いうちはいい経験になります。悶々(もんもん)と惰性で日々を過ごすより、思い切って行動してみるのもいいのではないでしょうか。

―学生時代にやるべきことはありますか。

コミュニケーション能力を身につけることです。海外ではおとなしいと損をしてしまいますから、みなさんはもっと自分をアピールした方がいいと思います。また、いろいろな価値観を身につけることも大切です。私は留学を通して精神力や忍耐力が鍛えられたので、ぜひいろいろなことにチャレンジしてみてください。

人に役立つものを生み出す

研究室で機材の説明をしてくれる 山西陽子先生
――研究をしていて楽しいと思ったことはどんなことですか。

アイディアが具現化したり、わからない現象がわかるようになったり、データが得られたりすると、ワクワクします。1人で盛り上がっていると研究室の学生にびっくりされますね(笑) 。

――女性研究者として得したこと、困ったことはありますか。

「先生に覚えてもらえる」というのがメリットですね。ただ男社会に慣れないので、どこまでついていったらいいのかなど、付き合いが難しかったりします。
インタビューは女性同士で和気あいあいと行いました!
――どのような人が研究者に向いていると思いますか。

自分のこだわりがある人だと思います。また、一つのことをトコトンやり遂げる力があり、自分の道を切り開いていける人も向いていると思います。

――最後に、理系を目指す人へメッセージをお願いします。

人の役に立つ技術を生み出していってください。理系を目指す人が増えてくれると嬉しいです。理系としてものづくりを目指すには大変なこともたくさんありますが、それだけの価値がそこにはあると思います。

大きなクリ-ンルーム、研究室内の様子

クリーンルーム用の着衣に着替えます
取材の終わりに研究室内を見せていただきました。その様子を紹介します。研究室の中で最も目立っていたのは大きなクリーンルーム。特別にこの中に入らせていただけることに! まずはクリーンルーム用の着衣に着替えます。

全身を水色の着衣で包んだら準備完了。靴も履き替え、このままクリーンルームへと入っていきます。クリーンルームまでは2つの扉があり、はじめの部屋では空気のシャワーで埃を落とします。それが終わればいよいよ中へ。黄色の蛍光灯が印象的ですが、これは遮光が必要な物質があるため。蛍光灯や日光そのままの光では材料が感光してしまうそうです。
中は思ったよりも広く、数人入ってもさまざまな作業ができそうでした。
大きなクリ-ンルーム、研究室内の様子
今回は、研究が楽しいものであるということを改めて感じる取材となりました。山西先生の生き生きとした表情がとても印象的でした。

研究者としての道を切り開くための助言もしていただき、私にとって大変有意義な時間となりました。人の役に立つものづくりをする、価値のあるものを生み出す、この言葉をしっかりと胸に刻んでおきたいと思います。

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