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CAREER LAB【ロケット開発特集Part2】いよいよ、宇宙開発が面白い!世界のロケット開発の歴史

【ロケット開発特集Part2】いよいよ、宇宙開発が面白い!
世界のロケット開発の歴史
DATE2017/05/25

今回は世界各国のロケット開発の状況を紹介します (図1)。
ロケットはミサイルから始まり、各種衛星・惑星探査機打ち上げや月飛行への手段となりました。今や、各国はロケット打ち上げをビジネスとして請け負っています。Part-2ではこの歴史を見ていきます。

図1 ロケット開発の歴史

宇宙開発・ロケット開発の出発点

ロケット開発は、1903年にロシアのコンスタンチン・ツィオルコフスキー氏が提唱した液体燃料型多段式ロケットや人工衛星、惑星への植民など宇宙開発の概念に始まります。
1923年、ドイツのヘルマン・オーベルト氏がロケット推進に関する実証的理論を提言し、1926年には、米国のロバート・ゴダード氏が液体燃料ロケットの打ち上げ実験を成功させました。

ドイツにおけるロケット開発の歴史 - V2ロケット開発

ロケット開発の歴史は、良くも悪くも、ドイツから始まります。
1923年のオーベルト氏理論を受け、1927年に財団法人VfR(Verein für Raumschiffahrt:宇宙旅行協会)が設立され、宇宙旅行研究が進みました。しかしながら、1932年にドイツ陸軍兵器局がロケット兵器開発を開始し、協会は1933年に解散。協会に所属していたヴェルナー・フォン・ブラウン氏もドイツ陸軍兵器局に移り、ロケットは兵器一色となったのです。ドイツは1942年には液体燃料を使った高性能ロケットの開発に成功し、V2ロケット(図2)を実戦配備・使用しました。
ドイツ敗戦後、フォン・ブラウン氏らドイツのロケット技術者や設計資料・V2ロケットそのものは、米国やソ連に接収され、ドイツのロケット開発は終わりました。

出典:Wikipedia

図2 発射準備中のV2 ロケット

ソ連・ロシアにおけるロケット開発の歴史

ロシアは、現在、ソユーズとプロトンという2系列のロケットを運用しています。ソ連のロケット開発はドイツから接収したV2ロケット資料から始まりました。
ソ連はこの技術を基に世界初のICBMとなる「R7」ロケットを開発。このR7ロケットが宇宙開発に転用され、1957年の世界初の人工衛星スプートニクやガガーリンを宇宙に送ったボストーク1号の打ち上げに使用されました。
1964年、R7からソユーズが開発され、その後、今に至るまで宇宙船や衛星を打ち上げに利用されています (図3)。
プロトンも大型ICBMからの転用ですが、もともとは、月飛行を想定したロケットでした。ソ連は有人月飛行計画を中止しましたが、プロトンは、今も静止衛星打ち上げに利用されています。

出典:Wikipedia

図3 ソユーズ打ち上げ

米国におけるロケット開発の歴史

米国は、現在、アトラス・デルタという2系列のロケットを運用しています。
米国のロケット開発もドイツから接収した情報から始まりますが、50年代の米国は大陸弾道ミサイル・人工衛星打ち上げ・有人宇宙飛行においてソ連に先を越され、「スプートニクショック」に覆われていました。1958年、米国はアメリカ航空宇宙局 (NASA、National Aeronautics and Space Administration)を設立しました。アメリカのロケット開発はここから始まります。
NASAは、大陸間弾道ミサイルからアトラス、中距離弾道ミサイルからデルタの2種類の衛星打ち上げ用ロケットを開発し、次に月往復を可能にする超大型ロケット、サターン(図4)を開発しました。こうして、世界初の人類の月着陸を1969年7月に実現し、ソ連に一矢報いたのです。

出典:Wikipedia

図4 発射台のサターンVロケット

有人月面着陸に成功した米国は、80年代には宇宙輸送システムとなる再利用可能なロケット、スペースシャトルに移行しました。以来、米国はスペースシャトル・アトラス・デルタの3系列の運用になりました。しかし、スペースシャトルの2011年退役により、今はアトラス・デルタに2系列になっています。2020年にはバルカン開始とともに、デルタも退役の予定です。
一方、科学探査機用ロケットも開発されており、探査機を外惑星や火星、土星に送ってきました。
米国で注目すべきことは、民間宇宙ベンチャーが、2000年以降、多数創設されていることです。有名企業としては、イーロン・マスク氏のSpace-X (すでに打ち上げサービス開始)、ジェフ・ベゾス氏のBlue Originがあります。今後は民間宇宙ベンチャーの活躍が期待されています。

欧州におけるロケット開発の歴史

欧州はアリアンという系列のロケットを運用しています。
欧州のロケット開発の起源は、米国の援助を受けて英国が1955年に開発着手したミサイル、ブルーストリークです。この開発は1960年に中止となり、1964年に人工衛星用ロケット開発が欧州ロケット開発機構(ELDO: European Launcher Development Organisation)で始まりました。しかしながらELDOは関係国間の連携が悪く、1964年から1971年の間に10回以上ロケットを打ち上げたものの相次ぐ失敗で解散となります。
その後の1975年、欧州各国は欧州宇宙機関(ESA: European Space Agency)を設立しアリアン開発に着手し、ついに1979年にアリアン1ロケットの打ち上げに成功しました。
ESAは1980年にロケット打ち上げ専門企業となる「アリアンスペース」を設立。打ち上げビジネスに参入し、アリアン2・3・4・5 (図5)と大型化ロケットを次々と開発し、今日にいたっています。今、ESAは後継機種となるアリアン6を、2020年初打ち上げを目指して開発しています。

出典:Wikipedia

図5 アリアン5ロケット

インドにおけるロケット開発の歴史

インドには、PSLVとGSLVという2つの系列があります。
どちらも、世界一線級の競争力を持っています。
インドのロケット開発は固体燃料ロケットで始まりましたが、その後フランスからエンジンの技術移転を受け、液体燃料ロケットに移行しました。以後、インドは10年サイクルでロケットを実用化しています。

1993年
- PSLV (Polar Satellite Launch Vehicle) 初号機打ち上げに成功
- 大きな打ち上げ能力 (SSPOに1.8t、GTOに1.4t)と高い成功率 (2016年9月現在、37回中36回連続成功)を背景に衛星の商業打ち上げも積極的に実施
- インドの基幹ロケットと位置づけられる。

2001年
- GSLV(Geostationary Satellite Launch Vehicle)初号機打ち上げ
- GTOに2.5t・LEOに5tの衛星の打ち上げ能力を持つ

2014年12月
- GSLV MK-Ⅲ(LVM3)の試験飛行を成功(図6)
- LEOで8t、GTOで4tの打ち上げ能力を持つ

さらに、2016年5月には、小型シャトルを回収するロケット(RLV-TD)実験に成功しました。
インドの積極的なロケット開発には注目すべきものがあります。

出典:Wikipedia

図6 GSLV Ⅲの模型

Part-2では各国のロケット開発の歴史と現状を紹介しました。いろいろな読み方があります。

  • ロケット開発の歴史を、軍事利用から平和利用という流れから見る人
  • 失敗を重ね、試行錯誤も繰り返し、数10年の歳月をかけて成功にたどり着くストーリを読む人
  • 今が宇宙ビジネスを競い合う時代になっていることを読む人
    • (日本)H-IIB ~ (米国)アトラスV・デルタIV・ファルコン9 ~ (欧州)アリアン5 ~ (ロシア)プロトンM ~ (中国)長征5 ~ (インド)PSLV・GSLV。
  • 2020年頃から始まる次世代ロケットの競争を考えた人
    • (日本)H-3 ~ (米国)バルカン・ファルコン9 ~ (欧州)アリアン6 ~ (ロシア)アンガラ ~ (中国)長征7 ~ (インド)PSLV・GSLVの競争を考えた読者もいると思います。

宇宙開発は、今や商業活動という側面が強くなってきています。
日本と諸国を比較した時、日本のロケット開発は遅れていると思うところもあります。ただ「日本がいい」と考えられる点は、将来ロケット開発・運用に民間企業が参入できる可能性があるのは日本と米国だけということです。
民間企業とJAXAが協力しつつ競合し互いに刺激し合うことで、日本のロケット産業は必ずや大きな飛躍を遂げるでしょう。
地上の仕事に飽きたら、ロケット開発も含めて、宇宙に仕事を探すというのもアリだと思いますよ。

筆者: 鈴木浩之 (株式会社 ICTラボラトリー 代表取締役)


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