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CAREER LABハクトが描く未来「宇宙はだれでも行けて、手が届く世界」 ハクトインタビュー第8回

ハクトが描く未来
「宇宙はだれでも行けて、手が届く世界」
ハクトインタビュー第8回
CATEGORYコラム
DATE2015/06/26
ハクトインタビュー第8回
ハクトは、ロボットによる月面探査に挑戦する、日本の民間企業初の宇宙開発チーム。Googleによる国際宇宙開発の賞金レース「Google Lunar XPRIZE」に参戦する日本唯一のチームだ。

2014年12月に、月面を想定した浜松の砂丘でローバーの実装実験を成功させ、2015年1月にXPRIZE財団とGoogleによる「モビリティサブシステム中間賞」を受賞したハクト。
その後、開発メンバーとして参加した二人に、ハクトで宇宙開発に携わるやりがいを聞いた。
「Google Lunar XPRIZE」とは、XPRIZE財団が主催し、世界最大級のIT企業Googleがスポンサーとしてサポートする月面無人探査をめざす国際的な宇宙開発レース。 ミッションは、2017年末までに月面に100%民間開発の無人探査機を着陸させ、着陸地点から500m以上走行し、指定された高解像度の動画や静止画データを地球に送信することとされている。
左:古友大輔さん 右:田中利樹さん
左:古友大輔さん 右:田中利樹さん
略歴紹介
田中利樹さん
株式会社ispace エレクトロニクス・エンジニア。2015年4月にチームハクトに参加。以前は、東京大学の研究員として小型の人工衛星開発に5年間携わる。
古友大輔さん
株式会社ispace メカニカル・エンジニア。2015年2月にチームハクトに参加。以前は、自動車メーカーの運動性能設計、ブレーキシステム設計を経て、国際宇宙ステーション(ISS)のシステム設計を6年間担当。
―チームハクトに入るまでのキャリアは?

田中さん:

私は東京大学工学部で航空宇宙工学を専攻し、同大学院を卒業後は、中須賀真一教授の研究室の研究員として5年勤めていました。民間企業と組んで、小型の人工衛星の開発・設計を担当し、50cm3ほどの超小型衛星「ほどよし」の打ち上げ、データ収集などに携わりました。

国から資金を得て進められた「内閣府最先端研究開発支援プログラム」というプロジェクトは、民間企業も宇宙開発に参画できるように開発ノウハウを民間に移行していくことが目的でした。

ですので、地上での開発にはない「真空で動くもの」「放射線に強いもの」といった宇宙の特異な環境下で耐えられるものを作るべく、設計図を描いて企業に作ってもらっては不備が生じてまたやり直す、というプロセスを繰り返していましたね。

古友さん:
私は6年間、ISSの中で使われるシステム機器の開発、設計、製造、検証を担当していました。その前は、自動車メーカーで、ブレーキシステム設計をしており、まさか宇宙開発に関わることになるとは想像もしていませんでした。

たまたま、NASA(米航空宇宙局)の仕事をしていた友人に仕事を依頼されたことがあり、スペースシャトルに搭載される宇宙実験のための装置を開発しました。
自分が作ったものが宇宙に行くことに感動を覚え、それ以来、ISSのシステム開発に携わることになりました。具体的には、日本実験棟「きぼう」で得られた実験データを、地球に効率よく送るためのシステムや、生物実験をスムーズに進めるためのシステムを開発していました。

―チームハクトに入ったきっかけは?

田中さん:

大学時代から一貫して、地球を周回する小型人工衛星の開発に携わってきたので、それ以外の分野で宇宙開発をやりたいと思っていました。また、世界と勝負する宇宙開発に関わりたいと思っていたので、「Google Lunar XPRIZE」に参戦し、世界に戦いを挑むハクトに興味を抱きました。

古友さん:
ISSでのシステム開発に携わっていた2年半ほど前、「二輪ローバーを作るため、クラウドファンディングでお金を集めたい」と袴田(株式会社ispace代表取締役)が、Facebookで情報を発信していたんです。
私は、宇宙開発と自動車開発を経験してきたので、その二つの技術と知識を組み合わせたら、まさに「ローバー開発」につながります。ぜひやってみたいと考え、ボランティア開発者として、平日の夜と週末にハクトの活動に参加するようになりました。

ISSの仕事が一段落ついたことと、ハクトが中間賞をとったタイミングが重なり、本格的にハクトに携わろうと、2月からフルコミットすることを決めました。
開発中のローバー
開発中のローバー
―仕事内容とそのやりがいは?

田中さん:

現在は東北大学で、電子回路設計、熱設計を担当しています。真空の環境下では、熱を逃がすことができず、部品内にこもってしまうので、耐熱性に優れた設計が必須なんです。

難しいのは、月面の環境に関するデータが少なく、実際の環境をイメージするのが困難なこと。世界各国の論文を読み込んで、放射線量や温度、砂の状況などを想像して開発していきますが、見落としていることはないか常に不安がつきまといます。

例えば今は、ローバーが月面を走ると、舞い上がった砂がローバーの中に入り込んで電子機器をショートさせてしまうのではないかと想定し、それを制御できる設計を進めています。

もし、対策を設計に取り入れなければ、月に行ってみたら動かなくなったという事態に陥ります。
宇宙開発で設計するものはすべて非修理系(修理できないもの)なので、緻密な想定が必要なんです。

一方で、今まで地球周回人工衛星では考えることのなかった新しいチャレンジに日々向かえているのは、とても刺激的です。

古友さん:
私は、ハクトに協力していただくパートナー企業への技術面での営業活動を担当しています。
モーターやカメラは、ミッション達成のために非常に重要なアイテムなので、高度な技術を持つメーカーに開発協力をお願いしています。

まだ月面着陸したことのない日本で、もしハクトの挑戦が成功すれば、「日本で初めて月面を捉えたカメラ」「初めて月面を走ったモーター」になり、PR効果は大きい。
「当社の部品が宇宙に行けるのか」と不安を口にする担当者が多いので、宇宙環境について説明し、どのような設計が必要かをレクチャーするのも私の役割です。

ハクトのゴールは、4kg以内の超軽量ローバーを作り、限られた予算内でミッションを成功させること。そのため、「万が一壊れたときのために、余分な部品を持っていく」ことはできません。

国家プロジェクトで動くNASAや宇宙航空研究開発機構(JAXA)では失敗は許されず、万が一への準備は欠かせない。その文化に慣れていたので、ハクトの考え方は新鮮で面白いですね。
ハクトの挑戦の先に見据える未来は?
―ハクトの挑戦の先に見据える未来は?

田中さん:

まずはプロジェクト成功に向けて全力を尽くすこと。その上で、日本の技術が認められ、NASAをはじめ海外の宇宙機関から「ローバーの技術を教えてほしい」といったニーズが広がればいいなと思います。

古友さん:
そうですね。短期的には「ローバーが地球の外で動く」ことを実現させたい。中長期的な視点では、その結果、宇宙は誰でも行けるんだよ、手が届く世界なんだよ、ということをより多くの人に知ってもらいたいですね。

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